ええやんまちフェス
📅 2024.11.21-25
大阪市阿倍野区
2024.10.28
大阪府下で、大阪市に次いで人口が多い堺市。 そんな堺市で、一部の市民から熱狂的な人気を誇る公務員「ハニワ部長」が、大阪・関西万博と堺市を盛り上げたい! と「大阪・関西万博 勝手に応援し大使」を(勝手に)宣言。ハニワ部長とは一体何者なのか?! ポーカーフェイスに隠れた、熱い思いに迫ります。
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大阪府内で人口・面積ともに大阪市に次いで第2の都市である堺市。日本最大の古墳「仁徳天皇陵古墳」のほか、刃物をはじめ伝統技術を生かしたものづくりでも有名な地域です。
一見すると、万博とは直接的な関わりがない堺市。しかし実は、市内に本社を置く企業が万博に出展したり、技術力を注ぎ込んだ製品を提供したりと、ひとかたならぬ関係があるようです。
そんな中、堺と世界をつないで、万博を盛り上げたい! と「大阪・関西万博 勝手に応援し大使」を(勝手に)宣言したハニワ部長。SNSやイベントで堺市の名所、魅力を発信しているキャラクターが、なぜ万博を応援するのか? 謎に包まれた正体を探りつつ、彼を突き動かす思いや、今後の意気込みを伺ってきました。
ハニワ部長
年齢は約1600歳。古墳群をこよなく愛しており、令和元年8(ハ)月28(ニワ)日に正式に堺市職員となり、令和2年8月28日には「市長直轄 特命部長」に。ハニワ部長・CHO(Chief Haniwa Officer)として、堺市をPRしている。 堺市とJICA関西による「万博勝手に応援し大使」の取組に感銘を受け、令和6年2月に「大阪・関西万博 勝手に応援し大使」を宣言。万博と堺を(勝手に)盛り上げる活動に力を入れている。
ーーハニワ部長、はじめまして。改めて今日はよろしくお願いします! しかし、実際にお会いすると迫力がありますね……。
このように取材していただけるなんてドキドキ(土器土器)しています……私は2014年から「ハニワ課長」として活動をはじめ、百舌鳥・古市古墳群の世界遺産登録に向けてPRを行っていました。19年に古墳群が世界遺産に登録されると、私の功績も認められ、令和2年8月28日に部長に昇進させていただきました。ちなみにこの日付、何かピンとくるものはありませんか?
ーー828……はっ……ハニワ!
そうなんです。ハニワの日、ぜひ覚えてください。その後は日本最大の古墳「仁徳天皇陵古墳」のPRにより力を入れ、さらに翌年の「ハニワの日」には、堺市全体の情報発信を担当する「市長直轄 特命部長」に昇格。古墳群の応援に始まり、市全体の広報活動、そして今では(勝手に)万博を盛り上げたりと、活動の幅がどんどん広がっていきました。
ーー市の広報担当の一翼を担い、忙しい日々を送るハニワ部長が、さらに「万博も応援したい!」と思い至ったのはなぜですか?
堺市では、JICA関西(国際協力機構関西センター)と連携して「万博勝手に応援し大使」と題した出前講座を市内の学校で実施しています。万博出前講座は、子どもたちに地球の未来を担う存在になってほしい、世界に視野を広げてほしい、という思いから始まったプログラムです。世界各国の文化を子どもたちに紹介しています。
ーー万博を前に、子どもの国際理解を深める取り組みですね。でも、それがなぜきっかけに?
なんとその子どもたちは「万博会場で世界中の人にあいさつをしよう」と、受講後も勉強に励んでいるそうなんです。それを聞いたとき「なんてハニワンダフルな取り組みなのでしょうか!」と、衝撃が走りました。さながら小さな「大使」としてお客様を迎える準備を進める子どもたち……彼らと一緒に、私も万博を盛り上げたい、さらには多くの方に堺の魅力を発信したいと思い立ち、今年2月、自身の公式 Xで「大阪・関西万博 勝手に応援し大使」を(勝手に)宣言しました。
ーー大使としては、どのような活動をされているのですか?
以前と変わらず力を入れているのは、公式Xでの情報発信です。
開幕300日前には、博覧会協会が投稿した画像をもとに、堺市民芸術文化ホール「フェニーチェ堺」をバックにしたオマージュ画像を投稿したところ、博覧会協会公式アカウントから拍手を付けた引用リポストをいただきました。感激のあまり涙を流しそうになりました。ハニワなので涙は出ませんが……。
博覧会協会公式アカウントが拍手付きで引用したポスト
ーーこの構図で撮ると似ているなんて、よく思いつきましたね。あれ? よく見ると「!」が古墳の形に……! 細部までこだわりが感じられます。
お気付きいただけてうれしい! 思わず大コーフン(古墳)してしまいました! 万博やミャクミャクとコラボレーションしたキービジュアルも(勝手に)制作しています。特にこのポスター(写真右)は好評をいただいています。博覧会協会にも、堺市職員という私の立場にご理解をいただいているのか、堺の魅力になぞらえた発信も好意的に見守っていただいているようです。博覧会協会とは非常に良い関係が構築できていると(勝手に)理解しています。
最近では、ミャクミャクのご友人でもある、チェコパビリオンの公式キャラクター「レネ」を「堺アルフォンス・ミュシャ館」にお招きし、万博について熱く語り合いました。ミュシャは現チェコ共和国出身の画家です。ミュシャ館には1900年開催のパリ万博で手掛けた下絵もあるので、ぜひ一度ご覧になっていただきたいです。
また市内外のイベントに出演し、カチカチな体を動かして参加者のみなさんと直接コミュニケーションを取っています。先日はロックフェス「METROCK 2024 OSAKA」のステージに上がり、オーディエンスのみなさんに万博と堺市の魅力をアピールしました。「応援し大使」を宣言してからは、万博カラーの古墳柄がデザインされたタスキを着用していますが、このタスキをきっかけに万博の話で盛り上がることも増えました。
ーーご自身も暮らし、働かれている堺市ですが、特にここは知ってほしい! というところを教えてください。
なんといっても、まずは「百舌鳥・古市古墳群」ですね。住民との距離の近さが魅力の1つです。1600年前から、生活と古墳が共にあり続けてきた地域ならではだと思います。
ーーこのように上から眺めると、古墳のすぐそばに建物や道路があり、車が行き交っているのは不思議な風景ですね。
そうなんです。ところで、ここから見える仁徳天皇陵古墳は「世界3大墳墓」の1つでもあるのですが、万博の「大屋根リング」が何個入るか分かりますか?
ーーえっ……3個くらいですか?
正解は約8個です。これまでは「甲子園球場12個分」と話していたのですが、大使を宣言してからは、つい大屋根リングで計算するクセがついてしまい……そう考えると、大屋根リングは甲子園球場の約1.5倍の広さになるんですよ。
ーー大屋根リングが実際に建ち上がった姿を早く見たくなってきました。私も部長の術中におちいっている……?
そして、堺市は歴史・文化のまちとしても有名です。茶の湯の文化や刃物、線香、注染などの伝統産業……たくさんのレガシーが今も息づいています。 例えば堺の打刃物は、その素晴らしい切れ味・技術から、世界中の料理人が愛用しています。現在に至るまで「脈々」と受け継がれる匠の精神も、堺の宝です。
ーーそんな堺市の歴史に育まれた技術や人も、大阪・関西万博では活躍するのでしょうか?
よくぞ聞いてくださいました! 万博公式ライセンス商品の1つである「ミャクミャクあめちゃん手ぬぐい」は、堺の職人さんが「注染」の技術で染め上げたもので、すでに販売されています。注染は表と裏を同時に染めるため、長く使っても色あせしにくいんです。これから何年もたったあと、色鮮やかな柄を見て万博や堺を思い出していただく、そんなきっかけにもなってくれるはずです。
ーーこんなにカラフルに染めることができるんですね! 堺はこのようなオリジナリティが光る事業者が多いイメージもあります。
そうなんです。堺市に本社を置く大手外食チェーン企業をはじめ、市内10社以上が「大阪ヘルスケアパビリオン」に出展する予定です。さらに、万博スタッフの会場内モビリティとして、堺市の企業が取り扱う電動自転車が採用されています。さまざまな分野で万博を盛り上げている堺の企業さんを、もっと知ってもらいたいと思っています。
ーーいよいよ万博が近づいてきましたが、開幕までどのような活動をしていきたいですか?
引き続きSNSでの発信やイベント出演を積極的に行いますが、ここからは今まで以上に、市民や地元の事業者のみなさんと一緒に盛り上げたいと考えています。
ーー地元に根ざした活動も加速させるということですね。
私にとって身近な堺市民のみなさんに、ぜひ会場に足を運んでいただきたいと思っているんです。「ハニワ部長が頑張ってるのを見て、万博に行ってきたよ」「私も応援したくなって、勝手に『大使』になったよ」という人を増やすのが、私の密かな目標です。できれば開幕までに万博会場を訪れ、堺にゆかりのある国や企業、団体のパビリオンの建設状況をお伝えしたいですね。
ーーでは、万博の開催期間中はどのように盛り上げようとお考えでしょうか?
堺市が万博会場に出展している期間もあるので、現地へ赴き、実際の盛り上がりをお伝えできればと思います。海外の人も私を見て「ワオ! ハニワンダフル!」と感じてくれるはず。世界中の方々と直接交流できるまたとない機会を生かし、堺の魅力をお伝えします。そして、実際に堺に来てもらい、歴史・文化の奥深さ、技術力の高さを体感していただきたいです。会場に広がる未来社会を想像するとドキドキとミャク打ってしまいます! 石のようにかたい頭ですが、やわらかな思考力と、あたたかい心でこれからも頑張ります!
ハニワの頭部にスーツという独特のいでたちのハニワ部長ですが、その正体は地元愛と情熱、そしてユーモアの持ち主でした。取材中には、展望ロビーを訪れた人たちとあいさつを交わすひとコマも。部長の公式Xをフォローし、活動をチェックしておけば万博をもっと楽しめる? という問いには「ご期待ください!」と即答。彼が世界規模のバズを起こす日も、そう遠くないかもしれません。
文:山瀬 龍一
写真:宇都宮美沙
企画・編集:人間編集部