第12回 外国人食堂
📅 2025.2.14
大阪市浪速区
2025.2.19
「なにわのバトルエンターテインメント」を掲げ、老若男女を問わず人気を博す大阪プロレス。社長で現役レスラーのゼウスさんは、長らく「大阪・関西万博で試合をしたい」と夢を語り、2025年5月6日と7日に万博での試合開催が決定しました。なぜ、大阪プロレスは壮大な目標を描いたのか? ご本人に聞きました。
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1999年に旗揚げした大阪プロレスは、「激闘!感動!爆笑!」をモットーとする、大阪を拠点に活動する地域密着型プロレス団体です。幅広い年齢層が楽しめるプロレスを目指すため、流血や危険な武器の使用を禁止し、子どものファン層拡大に力を入れているのも特徴です。また、大阪の特産品をモチーフにしたマスクやコンセプトを持つレスラーが多く、地域性を強く打ち出しています。
2021年7月には、大阪プロレス生え抜きレスラーであるゼウスさんが大阪プロレスの全株式を取得し、代表取締役社長に就任。大阪プロレスをたくさんの人に楽しんでもらい、大阪をもっと明るく元気にするために、大阪の大会場から商店街やショッピングモールまで幅広く試合を展開してきました。
そうした活動が実り、2025年の大阪・関西万博での試合開催が決定。常々「万博での試合が夢」と語り、気合をたぎらせるゼウスさんに話を伺いました。
大阪プロレス株式会社 代表取締役社長
ゼウス(大林 賢将)
大阪市生野区出身。幼少期から筋トレが好きで、10代後半より本格的にボディビルトレーニングを始める。ボディビルの大会で優勝したのち、2006年に大阪プロレスに入団。入団後は数々のタイトルを手にするも、2014年に大阪プロレスが解散した後は、全日本プロレスを主戦場にする。第61代三冠ヘビー級王座獲得、史上3人目のチャンピオンカーニバル全勝優勝など、多くの栄光を手にした。 2022年1月に大阪プロレスを再始動させて以降、大阪・関西万博で大阪プロレスの試合をすることを目標に掲げ、公言をしてきた。確かなプロレスの実力と、突破力を武器に、プロレスを通じて大阪・関西を日々盛り上げている。
――2021年に大阪プロレス代表取締役社長に就任したゼウスさんは、社長就任当初から「2025年開催の大阪・関西万博で試合をしたい」という目標を掲げてきました。その理由は?
僕は生まれも育ちも大阪で、今も大好きな大阪に住んでいます。地元では行きつけの店にしか行かないんですが、僕たちプロレス団体も「行きつけ」のような存在でありたい。そのために、大阪経済を上向かせる万博での興行を実現させたかったんです。大阪プロレスの活動を通じて地元を盛り上げたいですし、来場される世界中の皆さんに大阪プロレスを見てもらいたい。そんな想いが強くあっての、今回の目標でした。だから、2025年5月6日と7日に夢洲会場での試合が決まったのはめちゃくちゃ嬉しかったです。
――では、万博で試合を実現させるためにどのような活動を行ってきたのでしょうか?
ホームページから申請を出すところから始まり、日本国際博覧会協会さんにあいさつに出向いたり、ボトムアップ式の参加型プログラム・TEAM EXPOに入ったりと、やれることはとことんやってきました。また、大阪府内の自治体と協定を結んで活動し、万博のアピールやプロモーションもしました。地道な行動の末、万博推進局の彌園友則局長を始め、万博関係者の皆さんに大阪プロレスの試合を見ていただくと、全員が「面白い!」という反応で。そこから一気に内定にたどり着いたような気がします。その瞬間は最高の気分でした。
――万博は大阪や関西と世界を結びつけるまたとない祭典だけに、大阪プロレスが関わることの意味はとても大きいと思います。これまで数多くの祭りのほか、商店街、ショッピングモール、公園といった「街」を会場に、プロレスファンだけではなく、不特定多数の一般層が集う場所で試合を行ってきたことにも、万博との親和性を感じます。
僕らは地域密着にこだわって活動しています。天神橋筋商店街、大阪城公園、鶴見緑地、長居公園、ショッピングモールなどで数多く試合をするのも、そんな理由からです。不特定多数の方が来られる場所で試合をすることで、プロレスファン以外にも裾野を広げていくことは何より重要。商店街に関しては、僕が大阪プロレスの社長になってから各地の商店街連盟さんとつながるようになって、地元の商店街を盛り上げたい想いで試合をしています。
――大阪の街に育てられてきたんですね。
はい。2024年には大阪城公園で試合を開催したんですが、約28000人もの人がお越しになりました。大阪城公園のような大きな野外会場でイベントを主催するときは、出店者を募っていただいた出店料で運営するんですけど、晴天のときは盛況で出店者さんがものすごく喜んでくれるんです。こちらも手応えがありますね。
――プロレスファン以外にも目を向けた試合の開催は、大阪プロレスにとって新規客獲得のプロモーションになっているんですね。
年間試合数や来場者数は、日本のプロレス界でも相当なものだと思います! それは商店街、ショッピングモール、公園といった誰もが通る場所で数多くのプロレス興行を開催しているからです。ビッグマッチを組んだときのチケット売上にも、地元活動が団体の認知度向上につながっていることを感じます。
――そうやって万博での試合に向けて活動していた大阪プロレスは、夢洲会場での試合開催内定をもらう以前の2022年11月23日に、謎のマスクマン・大阪万博マシーンをデビューさせました。これは大阪プロレスが万博での興行を打つための試金石になりましたね。
万博を盛り上げたいので、やはりそこを意識したキャラクターを作ろうとなったときに、最初はミャクミャクをレスラーとして売り出そうと思ったんですけど、さすがにNGが出まして(笑)。そこで生まれたのが大阪万博マシーンです。地元の議員さんを介して「大阪万博マシーンというキャラクターを作りたいんです」と2025年日本国際博覧会協会にお伝えすると許可が出たのでデビューすることになりました。
さて、舞台は変わって大阪中之島美術館。2024年12月3日、万博の機運醸成を図るプロジェクト・まちごと万博と大阪プロレスがタッグを組み、「まちごと万博決起集会―12.3の日、はじまりのゴングが鳴る―」が開催されました。
イベントは、万博の盛り上がりを街につなげようとさまざまな活動を展開する人々が、普段からどのような活動をしているかをプロレス形式で発表していくスタイル。美術館という異色のロケーションにリングが設けられ、プログラムは進行しました。その先陣を切ったのが、ほかならぬ大阪プロレスです。
オープニングセレモニーをぶち壊そうと飛び出したのは、大阪プロレスの悪役レスラー・ブラックバファロー。「何がまちごと万博だ! 俺がぶっつぶす」と言い放ち、一般社団法人demoexpoの代表理事・花岡さんに詰め寄ります。
そこに謎のマスクマン・大阪万博マシーンが颯爽と登場。やや苦戦する場面も見られましたが、見事にバファローを退治してまちごと万博決起集会の治安を守り、その後に続くプログラムに弾みをつけました。
――「決起集会」の盛り上がりは、プロレスの持つポテンシャルを証明したように思います。夢洲会場ではどのような試合を行うのでしょうか?
普段と変わらない大阪プロレスを届けたいです。5月6日と7日の2日間を予定していますが、反響次第では追加で試合が組まれるかもしれません。両日とも5試合を予定していますが、試合数が増える可能性もありますし、ゲストレスラーも呼ぶかもしれません。ただ、こればかりは笑いあり涙あり感動ありの大阪プロレスらしい世界観を展開して、多くの方に評価をしてもらわないと。万博をきっかけに、プロレス界も盛り上がってほしいなと思います。
――ちなみにゼウスさんはリングが置かれる夢洲会場のEXPOアリーナに2回現地視察に赴き、その壮大さに驚いたそうですね。
EXPOアリーナは巨大で、幅50m、高さは2mもあるんです。中央のLEDビジョンも幅15m、両サイドのLEDビジョンも幅11.5mずつあって、とにかく規模が大きい。全体が芝生で壮観ですし、こんな屋外会場はなかなかないですよ。
――楽しみですね。さて、「生まれも育ちも大阪でずっと大阪に住んでいる」と語るゼウスさんにとって、万博での試合は団体の命運を握る大一番となります。最後に万博に向けての意気込みを語ってください。
1970年に大阪万博があってから55年ぶりに大阪で万博が開催されます。今度の万博も大きな波を起こすはずなので、その波に大阪プロレスも乗りたいです。僕たちは万博の成功を心から望んでいるので、試合会場でもどんどん万博についてアピールしていきます。
――まちごと万博への参画もその一環ですよね。
まちごと万博の「勝手に万博を盛り上げよう」という姿勢には、街を舞台に闘ってきた身としてとても共感します。街と夢洲会場がうまく循環すれば、きっと大阪や日本はもっと元気になる。たとえば、大阪プロレスを目当てに夢洲会場に来る人がいてもいいし、たまたま通りかかった人が大阪プロレスを知って、ファンになってくれてもいいんです。僕たちは世界中の文化に触れられる祭りを構成するコンテンツのひとつとして、本気でファイトします。誰も見たことがない祭りをみんなで盛り上げていきましょう!
取材・文:ジャスト日本
写真:KANAME HAMADA
企画・編集:人間編集部