関西大学から万博ムーブメントを起こす!学生170人が奮闘する「関大万博部」を直撃

より多くの学生が万博に携わる機会を創出するため、大阪・関西万博に向けてさまざまなプロジェクトを進める私立大学「関西大学」。大阪ヘルスケアパビリオンへの参画など、大学公式の動きが展開される一方、学生主体で万博を盛り上げるのが「関大万博部」です。「万博の主役は関大生だ!」というスローガンを掲げる学生コミュニティのメンバーに、多岐にわたる活動の内容を聞きました。

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万博公式キャラクター・ミャクミャクと吹田市のイメージキャラクター・すいたんもキャンパスを訪れた

大阪府下に複数のキャンパスを構える関西大学。府内にある総合大学として存在感を示すため「2025大阪・関西万博に向けた協力・推進プロジェクトチーム」を設置し、万博に向けたさまざまな施策を実行しています。

大阪ヘルスケアパビリオン内に設けられる展示・出展ゾーンにおける中小・スタートアップ支援事業企画「リボーンチャレンジ※」に教育機関として唯一認定され、産学連携の取り組みの数々を披露する予定です。

※リボーンチャレンジ:大阪府内の優れた中小企業・スタートアップを発掘しながら、大阪ヘルスケアパビリオンでその成果などを効果的に発信できるよう、万博会期中だけでなく、準備期間・開催後も視野に入れた支援事業企画

また、プロジェクトチームは「いのち輝く未来デザイン」の実現に資するため、参加型プログラム「TEAM EXPO 2025」にも関与。チャレンジを生み出し、支援する「共創パートナー」として、歴史ある総合大学ならではのネットワークを活かし、持続可能な未来の実現のためのアクション「共創チャレンジ」を推し進めています。

大学の内外を問わず、万博を盛り上げようと動く関大万博部のメンバー。写真は阪急電鉄の車両を貸し切ったイベントでの様子

こうした大学の動きのかたわらで、2023年に誕生したのが学生コミュニティ「関大万博部」。活動がスタートしてからわずか1年で170名もの部員を抱える人気ぶりで、学生ならではの感性で万博を盛り上げようと一人ひとりが楽しみながら、前向きに活動しています。

関大万博部に籍を置くメンバーは、2025年をどうとらえているのか。そしていま、どんなプロジェクトが進行中なのか。4人の部員と、関大万博部の仕掛け人である大学職員・甲斐莉枝子(かい・りえこ)さんに話を聞きました。

関大万博部

万博を盛り上げたい学生たちが集まりさまざまな取り組みにチャレンジする関西大学公認の学生コミュニティ。これまでに、絵文字だけを使ったコミュニケーションツールで言語の壁を乗り越えるプロジェクト「エモジケーション」プロジェクトや、賞味期限が迫る非常食を活用したレシピでつくるローリングストックを意識した「小鉢弁当プロジェクト」、世界中で愛される飲み物で人をつなげる「関大万博クラフトコーラ&ビールプロジェクト」など数々の企画を生み出している。今後はキャンパス内をまるごと万博一色に染める「関大万博Weeks」にも参加予定。

関西大学

甲斐 莉枝子

宮崎県日向市生まれ。海と山、牛に囲まれて育ち、18歳で関西大学へ。卒業後、同大学に入職。学長秘書などを経て、2017年4月に梅田キャンパスに異動後、会員制コワーキングスペースのコミュニティマネジャーとなる。万博に関連する活動としては、2023年にEXPO大学関大キャンパスを実施後、関大万博プロジェクトメンバーとして「関大万博部」の運営を支援している。現在は千里山キャンパスにて大学の研究費に関わる業務を行いながら、ライフワークとして大阪・関西万博を勝手に周辺から盛り上げる活動「demo!expo」の活動に参画し、関大や万博に関わるヒトの応援団長(自称)として、明るく活動中。 プロフィールはこちら

学内でも存在感を発揮! 関大万博部の誕生とその現在地

今回お話を伺った関大万博部のメンバー。左から小高悠暉さん(社会安全学部 4年生/エモジケーションプロジェクト)、飯田妃美香さん(社会学部 4年生/関大万博クラフトコーラ&ビールプロジェクト)、坂上恭香さん(化学生命工学部 2年生/小鉢弁当プロジェクト)、保上明希さん(文学部 2年生/小鉢弁当プロジェクト)

関大万博部が産声を上げたのは2023年5月のこと。すでに関大は大阪ヘルスケアパビリオンへの出展が決定していました。しかし当時、梅田キャンパスで地域連携に関わっていた甲斐さんは、教職員ら「大人」だけが万博に関わることに疑問を抱いていたといいます。

甲斐

関大には、伝統的にお祭り好きの明るい学風が根づいています。大阪・関西万博は、いわば国際的な「お祭り」。「大阪にある関西大学」の学生が盛り上げずに誰が盛り上げるんだと思っていました。そこで万博や大学の取り組みを知ってもらおうと、2023年4月23日に「EXPO大学関大キャンパス(以下、EXPO大学)」を学生に向けて開催したんです。

学生ならではの感性に触れ、「天才やん!」と思ったと語る甲斐さん

どれほどの学生が集まるか未知数だったというものの、ふたを開けてみれば定員60名の枠がすべて埋まったEXPO大学。リボーンチャレンジについての説明に加え、万博に関わる卒業生も登壇しました。

甲斐

いわゆる「偉い人」ばかりが集うイベントという印象を払拭したくて、学生たちにとって身近な存在である先輩の話を聞いてもらいました。その後は参加者を10チームに分け、万博に向けて学生ができることを話し合うワークショップを行いました。

立ち上げを前に行われたアイデア出しの模様

学生たちがのびのびアイデアを語る様子を見て「ここで終わらせてはもったいない」と好感触を得た甲斐さん。このEXPO大学を土台に、翌月に本格始動したのが関大万博部です。目下活動中の部員に、入部のきっかけを聞きました。

飯田

万博自体にそこまで興味はなかったんですけど、EXPO大学のチラシにあった「関大生がやらなきゃ誰がやる」という言葉に惹かれました。学生のうちにどんどんおもしろいことをしたい私にはぴったりだと思いましたね。

保上

高校の3年間はちょうどコロナ禍だったから、みんなでアイデア出しをする経験自体が新鮮で。それまでの「一般来場者として参加できれば」という認識が大きく変わりました。

それぞれのプロジェクトをポスター展示で紹介する部員たち
甲斐

いろんなイベントがなくなる時期だったもんね。他の2人はどうだった?

坂上

2005年に地元の愛知県で開かれた「愛・地球博」に参加したんです。当時はまだ幼くて記憶にないんですけど、同じような催しがいま住んでいる土地で開かれる。そこに縁を感じました。

小高

もともとドローンの操縦免許を取得していて「空飛ぶクルマ」に関心がありました。とはいえ、学生には万博は遠い存在で。大学からのアナウンスを聞いて「チャンスだ!」と思い、すぐに参加を決めました。

甲斐

なるほど、それぞれ違う角度から興味を持ってくれたんだ。EXPO大学、交流会、プロジェクトチームの発足と、あれから1年経って「万博を機に、何か新しいことに挑戦したい」という思いが着実に形になってきている。心強いです!

発足当初20人弱だった部員は、いまでは170人を数える大所帯になりました。現在はチームごとに「いのち輝く未来社会のデザイン」という万博のテーマに沿ったプロジェクトを実行中。千里山キャンパスでの地域交流イベント「まちFUNまつり」、学外では「EXPO TRAIN 阪急号」といったイベントで、その成果を披露しています。

国際交流からフードロス削減まで。三者三様な3つのプロジェクトを紹介

それでは、万博部では具体的にどのようなプロジェクトが進行中なのでしょうか。

1.絵文字で言語の壁を越える“エモジケーション”

小高さんが「視野が狭くなってしまいそうなときも別角度から意見をくれた」と語るプロジェクトメンバー

万博会場の夢洲には世界各国から人が集まるとあり、言語の隔たりは大きな課題になります。そこを乗り越えるべく始まったのが「エモジケーションプロジェクト」、略して「エモプロ」。絵文字だけを使う「言語を超えた言語」づくりが進みます。

エモジケーションを用いたメッセージカード。左が絵文字の使用例
小高

20名ほどのメンバーで、文化の違いを克服できる新しい絵文字を開発したり、英文法のようにルールを決めたり。絵文字の組み合わせで世界中の誰とでも気軽に交流できるツールを目指しています。

日本発祥のEmoji(絵文字)を使って世界中に万博招待状を!

2. “関大万博クラフトコーラ&ビール”で人と人とのつながりを

EXPO TRAIN 阪急号でのワークショップの模様。自宅でコーラがつくれるキットの開発も視野に入れる

世界中で親しまれている飲み物づくりを通して、人の輪を広げようと活動するのは「関大万博クラフトコーラ&ビールプロジェクト」です。クラフトコーラのレシピは、砂糖と複数のスパイスを調合して煮詰めて炭酸水で割るという、シンプルなもの。間口の広さと仲間とのコミュニケーションが両立するのがポイントです。この5月には、どの部活動に参加するか悩む新入生を対象にワークショップを開催し、参加者が親睦を深めました。

大学でホップを栽培し、クラフトビールにする意外性も注目ポイント
飯田

コーラから派生して、クラフトビールづくりにも挑戦中です。ホップはキャンパス内で栽培していて、学舎を覆うグリーンカーテンの機能も果たしています。一方では適正飲酒の啓発も目的です。

さぁ繋がろう、希望の明日へ!「関大クラフトコーラプロジェクト」

3.非常食を生まれ変わらせてフードロス削減につなげる“小鉢弁当”

彩りも豊かな小鉢弁当。坂上さんのお気に入りは鯖カレー(左上)、保上さんはフレンチトースト(右下)

非常食をアレンジしたレシピでお弁当をつくり、フードロス削減とローリングストックへの意識向上を図るのは「小鉢弁当」プロジェクト。大学と連携協定を結ぶ公益社団法人 日本非常食推進機構(We Act)とともに、企業や自治体から大量に出る賞味期限の迫った非常食をアレンジし、おいしく活用しようと動いています。

容器も環境に優しいものを使用。EXPO TRAINでは非常食とレシピのセットを配布した
保上

小鉢というスタイルを選んだのは、好き嫌いがあっても無理なくいろいろと食べられるからです。非常食同士を組み合わせたり、調味料を加えたりといった工夫で、よりおいしく無駄なく食べられるレシピを考えていて、まちFUNまつりでは170食を提供しました。

坂上

万博会場で自分たちの考案したお弁当を提供することを目標に、フードロスという社会課題に挑んでいます。

非常食アレンジレシピで作る、ローリングストックを意識した“小鉢弁当”プロジェクト

学生主導のプロジェクトから得られた成果と課題

では、一連の活動は学生たちにどのような刺激をもたらしたのでしょうか? 率直な心境を語ってもらいました。

2025年には卒業を迎えるも、大学院に進学して活動を継続するという小高さん
甲斐

まずはエモジケーションから聞こうか。小高さんが「言語の壁を越えた言語をつくる」と宣言して始まったプロジェクトだけど、そのアイデアはどこから出てきたの?

小高

みんなとアイデア出しをしていて、高校時代にALTの先生と身振り手振りと絵文字を使ってコミュニケーションしていたのを思い出したんです。英語圏には既存の文字を組み合わせた顔文字はあったけど、絵文字は日本発祥だということも知って「これは活かさないと」というところからのスタートでしたね。

エモジケーションを説明するポスターとともに写真に収まるメンバー
甲斐

なるほどね。エモジケーションのすごいところは、学生がゼロイチでプロジェクトを立ち上げたこと。どんなふうにステップアップしてきた?

小高

最初は昨年12月のまちFUNまつりで、子どもたちを対象にスタンプラリーを実施しました。そこで絵文字で会話が成立するのを体感できて。ただ「ポストの絵文字のはずが時計に見える子もいる」といった予期せぬ発見もありました。

阪急の車両をモチーフにしたシートに、思い思いの絵文字を貼りつけていく
甲斐

そうした気づきが次につながるんだよね。

小高

実証実験の繰り返しですね。今年4月のEXPO TRAINには中国からの参加者もいて。エモジケーションで会話が成立したのは素直にうれしかったです!

甲斐

エモジケーションでできた万博への招待状を世界に届けるという夢に、着実に近づいているんだ! がんばって!

小高

はい! メンバーと意見交換しながら、さらにブラッシュアップしていきます。

甲斐

クラフトコーラ&ビールはどう?

スパイスをかじってみて「これ入れたらおいしくなるんじゃ?」という試行錯誤を楽しんだこともあったそう
飯田

ゼロから商品をつくるところが何より魅力的ですね。仲間との絆が深まったのもうれしかったです!

甲斐

メンバーの関係性が煮詰まった結果、おいしいコーラができたんだ。イベントでのワークショップも盛り上がったんだよね!

多種多様なスパイスを調合することで、ふたつとない味わいを生み出す
飯田

完成したコーラを試飲するだけでも楽しいんですけど、試作過程で自然と会話が生まれるので。ワークショップの開催は、そのワクワク感を広げようという思いからでした。

保上

私も試飲させてもらいましたが、本当においしくて。ワークショップにも参加したいです!

飯田さんいわく「試作の段階で激辛コーラができたチームもありました(笑)」とのこと
甲斐

いいね〜。クラフトビールの方はどんな感じ?

飯田

関大で育ったホップを使って大学を代表する飲み物にしようとがんばっています。大学には20歳未満の学生もいるので、コーラとの相乗効果を狙いたいです。それこそ世代を超えてつながれるような。

今年10月下旬の校友イベントで初めての乾杯イベントを予定
甲斐

大学を巣立っても、自分の育てたホップを使ったビールで乾杯できる。これって、とてもすてきなことだよね! 卒業生と現役学生の架け橋を目指してほしいな。じゃあ次、小鉢弁当いってみよう!

中学生時代から環境問題に関心を寄せていたという坂上さん
坂上

とにかくたいへんです(笑)。何がどれだけ余っているか、イベントの直前になるまで分からなくて。1ヶ月くらい前に余剰品の種類や量が分かるので、そこからどんな献立を何人分提供できるか逆算しています。

飯田

はたから見ていても、小鉢弁当のみんなはいつも苦労が絶えない感じでした(笑)

イベントごとにアンケートを取り、より好まれるお弁当を提供しようと模索する
甲斐

レシピはどうやってつくるの?

保上

インターネットのレシピも参考にしながら、毎回試行錯誤してアレンジ法を練っています。提供された非常食という制約があるので、突貫で考えることも多かったですね。学内でみんな揃ってお鍋を振るって。

ギタークラブとの掛け持ちで、ハードながらも充実した学生生活を送る保上さん。他にも掛け持ち部員は多い
坂上

アレンジと同じくらい大切なのが、メンバーの役割分担を明確にすることです。この春に新入生を迎え、40人近くなったプロジェクトメンバーを管理するのは初めての経験で、そこもトライ&エラーの連続でした。でも、これって普通の学生生活じゃ経験できないことだなって。

イベント当日は他のチームから応援メンバーも駆けつけた。写真はまちFUNまつりの様子
甲斐

うんうん、そうやって挑戦と失敗を繰り返すのも関大万博部の目的です。部員も増えたことだし、関大生はもちろん1人でも多くの人に万博のワクワク感を伝えてほしいな!

“万博の主役は関大生だ!”を体現する2025年へ

プロジェクト間の連携に課題を残すというが、仲のよさはひしひしと伝わってきた

さて、ここまで3つのプロジェクトを見てきましたが、万博開催まで1年を切ったいま、新しい動きも出てきています。その象徴ともいえるのが「関大万博Weeks」。来年度からキャンパスと夢洲会場の双方を舞台に、国際交流、地域の魅力発掘、グッズ開発といったプロジェクトが進められる予定で、この10月からはプレイベントも開かれます。

2025年の目玉で、なおかつ関大万博Weeksの核ともいえるのが、6月下旬から7月上旬、9月中下旬に行う「関大万博フェスタ」。学生・生徒のみならず、校友会や地域・企業の方々などすべての人を対象にした催しとして、エモジケーション、クラフトコーラ&ビール、非常食小鉢弁当といった万博部の各プロジェクトで生まれたコンテンツを最大限に活用する企画を構想中。さらにコーラ、ビールの乾杯イベントや産学連携の技術体験イベントなども盛り込みます。

また万博会期中には、夢洲会場の「TEAM EXPOパビリオン」で「1日関大デイ」も予定。学生を万博会場に送り込み、主体的に関わった成果をキャンパスに持ち帰ってもらうことで、またとない祭典の熱量を大学全体に伝えようという構えです。

このように、ますます勢いを増す関大万博部。最後に、座談会に参加してくれたメンバーそれぞれに、万博本番に向けた意気込みを宣言してもらいました。

飯田

新たなメンバーも含めた全員が「やったぞ!」と思えるチームづくりに努めます!

坂上

学業にも力を入れながら、全力で楽しみたいと思います!

保上

社会人になって学生生活を振り返ったときに「やってよかった」と思える、そんな万博にしたいです!

小高

身近なところで開催される万博は一生に一度あるかどうかのチャンス。悔いなく楽しみたいです!

甲斐

みんな頼もしい! これからも関大生らしく「万博の主役は関大生だ!」と胸を張れるような2025年を目指しましょう!

キーワードはずばり「万博の主役は関大生だ!」。開催を目前に控え、関大万博部の活動はさらに加速し、万博を盛り上げていくことでしょう。

取材・文:関根デッカオ
写真:前田和泉
企画・編集:人間編集部

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