会場は、夢洲だけにあらず。キタとミナミに誕生する「EXPO酒場本店」で、世界中の人と乾杯しよう!

ついに4月13日から始まる大阪・関西万博。会場の夢洲では続々とパビリオンが完成し、これから始まる約半年の万博期間への期待が高まっています。そしてそんな盛り上がりを見せるのは、実は夢洲だけではありません。大阪の街中では、万博会場と大阪の街を繋ぐプログラム「夜のパビリオン」が開催されます! そのメインプロジェクトでもあるEXPO酒場のプレイベントがあるということで、さっそくお邪魔してみました!

Latest Event

Latest

「夜のパビリオン」を企画するのは、これまで「まちごと万博」と題して、万博をきっかけに生まれるおもしろいプロジェクトや、活動をする人に注目してきた、一般社団法人demoexpo(以下、demo!expo)。「でも、やろう」を合言葉に万博開催の機会を、街の中で最大限に活用しようとプロジェクトやイベントを企画してきました。そんなdemo!expoが、日本・大阪に訪れる海外の人たちや、会場で働くスタッフ、観光客、そして大阪の街の人々を繋げる場として生み出したのが「夜のパビリオン」です。

メインプロジェクトの「EXPO酒場本店」は、大阪のキタとミナミそれぞれに本店を構え、万博会期中の半年間、飲食や音楽、トーク、ショッピングの場としてオープン! 週替わりで「まちのテーマウィーク」や「まちのナショナルウィーク」といった企画を予定し、海外の国や国内の地域、企業などさまざまなパートナーと共に、酒場を盛り上げていくそう。
食い倒れの街、そして飲み倒れ(?)な街・大阪だからこそのプロジェクト。果たしてその実態はいかに!?

開催目前! 街中に生まれた「夜のパビリオン」がプレオープン。

まだ寒さが残る3月某日に行われた、プレイベント。当日はキタ本店からイベントがスタートし、後半はミナミ本店へ会場を移すという街を横断するイベントに。

ルクアの地下2階にあるアトリウム側エスカレーター吹き抜けに展開するEXPO酒場キタ本店。明治7年に初代大阪駅ができたことを機に、大阪の交通の要衝となった梅田。大阪のビジネス中心地となり「働くまち」として栄えてきました。ここ梅田で、昼に一生懸命働いた人たちが、夜にはこの街を「憩いの場」とし、さまざまな人と未来を語りあったのでは? そして街の進化に貢献してきたのでは? そんな思いをもとに、キタ本店のコンセプトは「働くまちの憩いの場」に。万博会期中は、EXPO酒場の常設店を舞台にした「EXPO RADIO」の公開収録も行われるそう。

ステージには、左から在大阪オランダ王国総領事のマーク・カウパースさん、大阪商工会議所会頭・サントリーホールディングス株式会社代表取締役副会長の鳥井信吾さん、三菱UFJ銀行副頭取・早乙女実さん、demo!expo代表理事の花岡さん。

今回のプレイベントを記念して、ステージでは万博関係者によるトークセッションが開催。「万博と大阪の街」をテーマに、夜のパビリオンの可能性についてトークが広がります。

「食べることには積極的にお金を使う」という大阪人の特徴を踏まえ、「食い倒れの街・飲み倒れの街を、夜のパビリオンの会場とするのは大阪の特徴を活かしている」と話してくれた早乙女さん。

大阪で暮らして3年半が経ったという総領事のマークさん。これまで多くの人とお酒の場を共にし、居酒屋から小さなバーまで、さまざまな酒場を体験してきたそう。国を超えて共に課題やハードルを乗り越えるには、夜の大阪でリラックスしたコミュニケーションを築くことが大切! と、EXPO酒場へ期待。

鳥井さんからは、「大阪人の持っている人と人の壁を乗り越える力を発揮できる場こそが、この夜のパビリオンだ」とメッセージが。本当の大阪の良さを知ってもらう場と、それを企画したdemo!expoに熱いエールが送られました。

夜の大阪文化の一つ「スナック体験」で、一気に打ち解けたムードへ。

成功を願って乾杯! 今日は特別に、本オープン後にEXPO酒場で予定されている企画「スナック体験」が始まりました。

実は大阪には、4,000件もあるというスナック。最近では、大阪の街中でインバウンドの観光客向けに、スナックを楽しめるガイドツアーも行われているそう。スナックに行ったことがない人も、隣り合わせた人と一緒にお酒を楽しむスナック文化を、EXPO酒場に来るだけでちょっぴり体験できるんです。

待ちに待ったオランダパビリオンの全容を公開! 国民食「ハーリング」体験も。

今回のプレイベントのもう一つの目玉は、オランダパビリオンの初出し内覧会。会場にはオランダ生まれのミッフィーちゃんの姿もあり、どのような発表がされるのか、会場にいる人たちの胸の高鳴りまで聞こえてくるような……?

左から在大阪オランダ王国総領事館の野口さんとマルタインさん、キタ本店で進行を務めるdemo!expo理事の今村治世さん、JR西日本SC開発株式会社の出口清史さん

オランダ総領事館の野口さんとマルタインさんが、親善大使のようにパビリオンのコンセプトや内容について語ってくれました。共に分かち合い、新しい価値を生み出す「コモングラウンド」をテーマにしているオランダパビリオンでは、人々が集い、お互いに学び合い、刺激し合う空間を目指しているそう。波をイメージして作られた外観や、すべてリサイクルできる資材など、国を掲げてサーキュラー・エコノミー建築に力を入れているオランダならではのパビリオンデザインの秘密も教えてくれました。

会場ではパビリオンスタッフのユニフォームも紹介。もちろんユニフォームも環境配慮が考えられていて、未使用の廃材を使った素材で作られているんだとか。

そして、会場のみんなから最も熱い眼差しが注がれたのは……やはり食べもの。チーズを始めとしたオランダの名産や料理が紹介され、今日は国民食の一つ「ハーリング」が振る舞われることに。
「オランダのお刺身のような存在」と紹介されたハーリングの正体は、塩漬けしたニシン。現地では、街の至るところにハーリングのフードスタンドがあるそう。魚屋さんでも食べることができ、そのまま食べる人もいれば、今日のメニューのようにパンに挟んで楽しむ人も。

美味しい食事には美味しい飲み物をということで、オランダといえばのハイネケンを一緒に。日本ではまだあまり見かけない、ノンアルコールビール「Heineken® 0.0」も登場!
万博会期中は、パビリオン併設のカフェスペースでハーリングが食べられます。こんな風にユニフォームを着たみなさんが、提供してくれます。

初めてのハーリングに、みんな好奇心いっぱいの表情。やわらかく脂ののったニシンの塩漬けに、フレッシュな味わいの玉ねぎがアクセントとなり、ビールも進む一品。「美味しい!」という声が溢れかえるハーリング体験によって、前半が締めくくられました。

後半は、ミナミ本店へゴー!  みんながフラットに、お酒とオランダカルチャーを楽しむひと時に。

ところ変わって、こちらはEXPO酒場ミナミ本店。ミナミ本店は、心斎橋PARCO地下2階 TANK酒場/喫茶内に「人と文化が混ざり合う遊び場」をコンセプトに開催予定です。
ビジネスマンが多く行き交うキタと比べて、よりさまざまな人が集うミナミでは、EXPO酒場もさらにフランクな雰囲気に。さっきまで真剣な表情で通訳やパビリオン解説をしていたマルタインさんも、リラックスムードでトークに参加している模様。

画面には現地のJAZZフェスティバルの様子が。

カルチャー先進国のオランダでは、DJが「なりたい職業」8位に君臨するほどの人気。DJシーンやJAZZフェスティバルの紹介など、カルチャーの中でも音楽シーンについて語ってくれたマルタインさん。

オランダパビリオンでは6月20日に、ロッテルダム・フィルハーモニックオーケストラから、金管アンサンブルが来日しパフォーマンスをするそう。現地にいる、パフォーマンス担当者のCas de Boorderさんとミナミを繋ぎ、中継でトーク。
実は普段バンド活動もしているというマルタインさん、プレイベントのためにアコースティックライブを披露することに。
マルタインさんの弾き語りによって会場が一気に温まり、DJタイムへ突入。

最後は会場全体が、ハイネケンを飲みながら音に身を委ねる心地いい空間へと仕上がってきました。初めて会った人同士の会話も自然と生まれる、まさに大阪の夜の街ならではのシーンがうかがえました。

対談・肩書きを外し、人と付き合える大阪だから実現できる。「夜のパビリオン」が作る未来

キタ本店もミナミ本店も大盛況で無事終了したEXPO酒場のプレイベント。今回の企画について期待することを改めて、demo!expoの花岡さんと大阪商工会議所の鳥井さんにお話ししていただきました!

大阪商工会議所 会頭

鳥井信吾

大阪商工会議所運営の「大阪企業家ミュージアム」では、大阪の産業発展に貢献した企業家・「人」の展示を行う。「熱意ある人こそが大阪の魅力」と語る。サントリーホールディングス代表取締役副会長。

一般社団法人demoexpo 代表理事

花岡

2010年に株式会社人間を設立、2021年にdemo!expoを立ち上げ大阪・関西万博を勝手にプロデュース。現在、株式会社人間 代表取締役、変なプロデューサー、大阪まちごと万博共創プラットフォーム 協働プロデューサーを務める。

-夢洲会場から大阪の街中へと広がっていく「夜のパビリオン」に、期待していることとは?

花岡

大阪・関西万博は、158カ国以上が参加する大規模なイベント。せっかくの機会なので、交流がないまま過ぎ去ってしまうのはすごくもったいないと思うんですね。このEXPO酒場を通して対話をすることで、友達を作るのもいいですし、新たなプロジェクトが生まれたらいいなと。大阪をそんな街にしたいと思っています。

鳥井

やっぱり大阪の最大の魅力は、ざっくばらんで人と人の間に壁を感じずにコミュニケーションができること。そういう大阪の良さを一番発揮できるのが夜の酒場なんやないかな、と。

花岡

夜こそが偉い人も偉くない人も関係なく、肩書を外して一番フラットに喋れる時間を作れますし。

鳥井

本音が出ますよね、だんだんと。その雰囲気を作れるのも大阪やからこそと思います。先日も中国国際貿易促進委員会の任会長が訪日された際、「大阪と東京は、えらい違いますね」と。

花岡

え〜、そうなんですか!?

鳥井

そうそうそう。海外から来る人たちはよく、大阪の方が断然アットホームって言いますね。だからその良さを伝えられるのが「夜のパビリオン」だと思います。今は大阪の街も再開発が進んでいるけれど、ミニ東京化しているようにも感じていて、大阪の一番の良さはそこじゃないでしょうって。大阪の良さは、中身なんですよ。

花岡

インフラだけでなく中身がおもしろいところ、人が観光資源であるところこそが大阪の良さですよね。人と人の交流って、めっちゃ簡単な話なんですけど、その機会をきちんと作るかどうかで万博の結果というのは大きく左右されると思っています。やっぱり僕、勝手にやるってことはかっこいいと思うんですよ。大阪にはそれを許す土壌があると思います。東京には、たぶんない。それはやっぱり大阪には、江戸時代から商人が街を作ってきたという文化があったから。

鳥井

花岡さんたちは、そういう大阪文化を受け継いではる。

花岡

国じゃなくて民がやる、みたいな。

鳥井

それが東京は、役人がいて、政治家がいて、大企業があってというピラミッド社会が基本構造。大阪ももちろんそういうところはあるけれど、市井の人はそう思っていない。

花岡

そんなん関係ないわ! ぐらいで(笑)。勝手にやることの方が大事や! ということを、僕らは描いていけたらと思っています。

EXPO酒場は、建前をふりはらった真の交流ができる場所

花岡

極端な話、国というのは建前だと思っていて。だから国と国の交流というよりも、人と人の交流こそが本音で交流していると言えるんじゃないかと。

鳥井

戦争している国同士は、万博会場では交流できなくても、このEXPO酒場では乾杯ができると思う。それこそ、勝手にきたらわからへんしね(笑)

花岡

そうですね(笑)。だから外国人もパビリオンスタッフも街の人も、みんなが本音で交流できる場がここ。とりあえずここを待ち合わせ場所として集まって、そこからどんどん大阪の街に繰り出してほしいですね。

鳥井

特に40代以下の世代はこの場で出会った人や体験したことを絶対忘れないと思いますよ。若い時の記憶って、ずっと残ってるでしょ。私なんかもう全然、最近の記憶ないですよ(笑)

花岡

僕のこと覚えてます?(笑)

鳥井

それはもちろん(笑)。国を超えて、人種を超えて、カップルが生まれるくらいの場になったらおもしろいですよね。

花岡

いいですね。恋愛が生まれるぐらいの、濃厚な時間に。

鳥井

それこそ本音で交流できるからこその話でしょう? 昼間に「Say Hello!」だけでは、なかなか難しい。

花岡

そうですね。だからこそ、「夜のパビリオン」は、いろいろな可能性が生まれる半年の実証実験だと思っています。この企画が成功したらもちろんいいですし、失敗してもいい。ここで生まれた何かを、ソフトレガシーとして、どんどん街や自分たちに残していくことをやっていかないと、ほんまに万博を開催した意味がなくなってしまうと思います。何億と投資しているわけですし、国が何か良い結果を生んでくれると考えるのではなく、自分たちが何かを生んでやるぞ、という。僕らのように10人ぐらいのチームがこういうことをやっているのだから、大企業にもどんどんやってほしい。

鳥井

でもね、これは10人だからできるんですよ。

-10人の会社がやっていることで、自分たちも何かやってみようと行動に移す人が増えるかもしれないですよね。

花岡

僕らみたいに勝手に動く人がどんどん増えたら、それこそソフトレガシーかもしれません。

鳥井

そこが今、資本主義経済に一番問われているところだと思いますね。

ーではこれが、そのための実証実験?

鳥井

まあ、そんな大上段の目的を打ち出しているわけではないけれど。

花岡

でも万博はそういう意味でも、本当にいいきっかけだと思います。こんな風に鳥井さんと話せる機会だって、万博がなければありませんでしたし(笑)

鳥井

いやいやいや(笑)。でも、花岡さんのようなチームや動きがどんどん生まれるかどうかが、今後の日本経済ひいては世界経済の鍵になってくると考えていますね。

ものごとを進める時の原点でありながら、忘れがちな「人と人」。「夜のパビリオン」は、その大切さを教えてくれる。

158カ国を超える国が参加する大阪・関西万博。万博という言葉からは、未来や技術力の披露のような各国の最先端を体験する場という印象が強いけれど、結局のところ何かを生み出すのは人と人の出会いや交流だと実感させられたプレイベントでした。

いろいろな技術が発達していき便利な世の中になっていく中で、アナログでシンプルなことこそが一番難しいのかもしれません。万博がここ大阪を舞台に開催されることで、新しい出会いは必ず生まれ、それがきっと自分の糧になるだろうというワクワクするような予感を感じ、夢を膨らませてくれるEXPO酒場。夢洲まで行く人も行かない人も、ここ「夜のパビリオン」で未知なる出会いをぜひ楽しみ、万博が生む大きな機会を自分のものにしてほしいです。

店名EXPO酒場 キタ本店
場所ルクア大阪 B2F アトリウム側エスカレーター吹き抜け
住所大阪府大阪市北区梅田3丁目1-3
営業時間17:00〜23:00  ※フロア営業時間 11:00〜23:00
店名EXPO酒場 ミナミ本店
場所心斎橋PARCO B2F TANK酒場/喫茶
住所大阪府大阪市中央区心斎橋筋1丁目8-3
営業時間17:00〜23:00  ※フロア営業時間 11:00〜23:00

取材・文:小島知世
写真:安田新之助
企画・編集:人間編集部

Share

特集一覧